「まだ待ってんのかよ」
「・・・宍戸か。なーんだ」
「俺で悪かったな。そろそろ30分くらい経つんじゃねえの?」
「かもねー。じゃああと30分くらい待ってみる」

俺の現れた様子には一瞥して、すぐに春希はさっきと同じポーズをとった。放課後の教室に一人、自分の席に座って頬杖をついて窓の外を眺めている。来るはずもないあいつを待ちながら。

「・・・。あいつ、来ねえぞ」
「うん、知ってる。メール着てた」

ぶらぶらとの白い足が揺れる。俺が教室に入った瞬間のの表情は、俺の姿があいつの姿と違うことで一瞬で落胆した。来ないとは知ってたのに、それでもあいつじゃないかと、俺が期待させた。・・・なぁ、跡部。お前、が好きなんじゃなかったのかよ。普段の自分忘れるほど、血相変えて飛び出していくぐらい大事な奴がいるくせに、何でと付き合ってんだよ。何で待たせてんだよ。しかも、も何で・・・何で待ってんだよ。

「“ごめん、別れてくれ”だって。急すぎるよね」

強めの風が窓を叩き、ガタガタッとさっきまで静かだった教室に、急に音が響く。頬杖をついて相変わらず窓の外を眺めているの顔は夕日ではっきり見えなかった。けど、その表情は泣いてない。今はただそう思いたかった。




オレンジに沈む


(09/04/18)