放課後の教室で1人震える指でメールを打つ。今から送るわけでもないくせに、いつでも送信相手の名前を間違えていないか確認して、たった1行の文を打ち込んでメールは完成する。 そして送信画面にして送信ボタンに手を触れてみて、やっぱりまだ押す勇気が無くて、そのメールは毎日削除行き。ふぅと溜息をつきながら携帯を閉じて、いつもの日課は終わるはずだった。・・・のに。

・・・なんでそないに手ェ震えてんの?」
「ぎゃ!」
「そない驚かんでも」

削除行きになる予定のメールが、突然かけられた声に思わず送信ボタン押して送信してしまった。と、どこかベタな展開かもしれないけど確実に私の携帯画面にの送信完了の文字が浮かぶ。 あわわわわと慌てる私に忍足は、ホンマどないしてん?と心配そうな顔を浮かべながらも、ポケットで鳴る携帯電話のメール受信に気付いた。 取り出した忍足の携帯を忍足に開かれるより先に私はそれを奪い取った。(やった!)

「何してんねんな、人の携帯奪って。返してや」
「あ、いや、新しい機種の携帯なんで見せて欲しいなぁと思って」
「ええけど、さっきメール届いたの先に見せてもらいたいねんけど?」
「あ、ところでメールに暗証番号でロックとかかけてないですよね?」
「(無視か!それに何で敬語やねん)しとらんけど・・・お前人のメール見る気かいな?」
「見られてまずいものでもあるのでしょうか?」
「いやないけど。なんや気色悪いしゃべり方やなあ」
「じゃあお借りします」

どうぞって渡す前にもう奪っとるやん!忍足のツッコミを無視して、強引に奪い取った携帯を開くとメールが1件着ていた。まぎれもなく私のメールだった。 本文には『好きです』の一言がしっかり書かれていて、ああ見られたらもう少しで寿命がうん十年って縮むところだったよ!と思いながら私のメールをしっかり削除。それを覗き込むように見ていた忍足に気付かないで。

「なぁ、の携帯の暗証番号って誕生日かー?」
「あ、うん、そう・・・ってなんであたしの携帯!」
「俺の携帯で何してんのかと思うたら人のメール削除しとるし」
「え、あ、ごめん!間違って消しちゃったよ!アハハ!!」
「送信ボックスのこれ消してたんか?」

机の上に放り出していた自分の携帯の存在を忘れ去っていると、忍足の手の中にあった。しかも安易に暗証番号まで聞き出して(分かりやすい番号にしていた私も私だけど)(それよりなんで忍足が私の誕生日知ってるのかも分からない)しっかりメールボックスは開けられていた。 送信ボックスの一番上には忍足宛ての、さっき忍足に送られたった1行の、『好きです』の一言がしっかり書かれた本文が残っていた。私は恥ずかしさも隠せず、どうすることも出来なくて、ただ目の前で忍足の顔を眺めていた。

って俺のこと好きやったんかー」
「い、いや、あの」
「本心なら口で言ってもらいたいんやけどな」

忍足は嫌味ったらしく微笑んだ。ここまで来たら隠したってしかたない。確定日のないいつかに本当に送ろうと思っていたんだし、手間が省けて良いと思え!玉砕覚悟を胸に大きく掲げながら、私は口を開いた。

「私は忍足が好き。忍足はどう思ってるの?」

すると私の持つ忍足の携帯にバイブが鳴ってメールが届いた。開けると忍足の携帯にメール受信の文字。 開けてみてや、と言われてメール受信画面に表示された名前は忍足の持つ私の携帯から。



好きです の再送信


(06/08/21)