閉じられた戸を静かに開けると、白い布団で沖田総悟は静かに寝ていた。いつもの、見るとすぐに笑い出してしまうようなアイマスクはしていなかった。起こさないようにそっと傍らに座って、熱がないかと額に手を伸ばす。と、長い睫毛がゆらりと動いて沖田総悟は目を開けた。

「起こした?ゴメン」
「・・・夜這いですかィ?は病人相手でも容赦ないんですねィ。まぁ俺は構いやせんが」
「違うって。あーあサドに勘違いまで混じり始めたよ、こいつ」
「それじゃあ何しに此処に来たんでィ?」
「総悟が倒れたって珍しい話聞いたからね。大丈夫なの?」
「たったそれだけのことで何の問題もありゃしやせんよ」
「ならいいんだけど」

気だるそうに起こされた体には白い寝巻きが着せられていて、総悟が病人だっていうことを認識させられた。普段の隊服とは真逆で真っ白だ。敵を斬ったら異様に赤が目立つくらいの。

「咳とかしてないの?」
「何の心配してんですかィ」
「もし、だよ。もしも・・・重い病気だったならちゃんと話してよね」
「そんなことありやせんて」
「だからもしもの話だって」

今日のお前はなんかおかしいですぜ?まさにその通りだ。本当に。何を私は心配しているんだ。そうだ、山崎君がなんか言ってたのを聞いてしまったから。・・・沖田さんはもしかしたら、結核かもしれません。って。結核ってなんだ。結核って病気以外の言葉が私の頭の中に存在しないのは知ってる。 咳して血を吐くんでしょ?人にうつるかもしれないから隔離されたりしちゃうんでしょ?血は仕事の時に浴びすぎてるのかもしれないけどさ、総悟は咳も血もまだ出てないのに、治療部屋になんて、みんなから引き離されたりしてるなんて。山崎君の言葉がずっと頭の中で回って、いつもの調子で嫌みの一つも言えないなんて。沖田に心配されて当然だ。

、今までいろいろと・・・悪かったですねィ」
「何で謝ってんの?」
「いや、俺のもしもの時の為に?」
「それは・・・冗談でも言っちゃ駄目でしょ」

そうでさァ、こんな話はとっとと止めにしやすぜ。総悟はごろりと布団に寝転がって、そっぽを向いた。何言っちゃってんの、総悟は。 私だって総悟だってまだまだ若いんだし、もしかしたらこのまま二人で結婚して家庭築くかもしれないし、もしかしたら別れてお互いに素敵な人みつけて付き合ってた頃が懐かしいねとか言っちゃうかもしれないのにさ。 二人は今ここに一緒にいるはずなのに、総悟がやけに遠くにいるみたいに感じる。どうしてなの。まだあっちに行くはずないよね、総悟。別れの言葉なんてまだまだ先の話でしょ。なのに、なんでそんな台詞を今ここで言うの。




白が似合うほど



怖いことはないよ



(07/10/08)