眠気覚まし用のコーヒーが本日5杯目を尽きた頃、ようやく山のように与えられていた書類作業が終わり、書類をまとめて机の上を整理したところだった。 綺麗になったはずの机の上に、頭上から白い用紙がバサバサと降ってきてあっという間に積み上がった。何だこれ、と上を向くと薄っすらと笑みを浮かべた六道さんと目が合った。 「・・・さっき全部終わったんですけど」 「、君に休憩時間を与えているほど仕事は暇ではないんです」 「でも六道さんはさっきからそこで座ってるだけじゃないですか!」 「僕はいいんですよ。君の上司ですから」 そんな理不尽な言い分ってないと思う。心底思う。ましてやここの会社の上司に逆らうことなんて死を意味しているとか全部分かってる。 分かってるけど。こっちは書類の仕事ばっかりで死にかけてるんだから分かれよ、コノヤロウ! そんなこと口に出すなんて恐れ多くて絶対出来ないけど、言わんとしていることは気配で気付かれたようで、六道さんは薄っすら笑みを浮かべていた。これは絶対命令だと彼のオーラが語っている。 「それより六道さん。真面目な話してもいいですか?」 「なんですか?」 「・・・部署変更をしたいんです。私も裏の仕事に―外の仕事へ出たいんです」 この会社は二面性である。表は大手の証券会社あるが、実はここの社員全員がボンゴレというマフィアのファミリーで構成されていて、裏ではこの辺りの治安を外部のマフィアから守っているのだ。 今日もみんな外回りと称してこの辺りの治安を守るためにいろいろな作業を行っているのに、私だけ取り残されて表の方の作業に追われていた。 「・・・外へ出てどうするんですか?千種や犬のように頭脳や力もないのに」 「書類ばかり眺めても治安どころか皆のしていることが分かるはずもないんです!だから」 「好奇心で出たところで君に何が出来ますか?」 「それでも傷つきながらも表の仕事をこなす皆の前でのうのうと表の仕事だけをしているわけにいかないです!」 「そうだとしても部署変更と言うのはなぜですか?」 「もしかしたら他の部署でなら・・・と思って」 そう申し訳なさそうに言ってみると六道さんは呆れたと言う様に溜息をついた。つきたいのはこっちのほうだ。本当に何も分かってないんですね、君は。・・・何をですか? 「いいですか?この部署は君を守るためにあるんです」 「は?」 「僕がいつでもを傍で守れるように、その為に君はこの部署に配属されてるんですよ」 「・・・全部冗談ですよね?」 「冗談?僕はただが好きなのですよ。愛してるんです」 「は?」 頭がおかしくなったのか、この人は。いや、おかしいのは今に始まったことじゃない。前々から冗談か本気か分からないことをよく言う人だったから、この人の言うことははっきりと信じられない。 言い返す言葉も見つからないまま、溜息混じりに新しく渡された仕事に手をつけた。 「ですから部署変更は無しで・・・おや、その様子ではさっきの話は信じてもらえてなさそうですね?」 「当たり前ですよ。六道さんの真意を掴むなんて私にできっこありませんから」 「そうですか。それでは」
信じたいならご自由に |