「ちょ、ちょっとあのマヨネーズのストラップ可愛くない!?」
「どこが」
「あのボディライン良過ぎ!素敵過ぎ!おじさん1回!!」

友達と花火目的で来た夏祭りの射的ゲームで見つけたのはマヨネーズ型のストラップ。マヨネーズの申し子、マヨラーとは私のことで今日の浴衣の柄もマヨネーズ柄なほどマヨネーズ好きだ。 友達はそんなあたしの様子に呆れてはいるけれど、呆れながらも付きあってくれてる。なんて良い人たち。絶対手に入れてやる。意気揚々に狙いを定めて引き金を引いて、ど真ん中。イエス大当たり! ・・・を狙ったはずなのに隣りから飛んで来た弾とぶつかった。

「・・・なにしやがる」
「それはこっちのセリフです」
「アレは俺のもんだ」
「私のものです」
「真選組一のマヨラー、土方十四郎を知らないのかお前?」
「そっちこそ本年度ミスマヨラーの私、を知らないんですか?」
「んなもんあるか」
「私が作ったんだからあります。あるんです。だから手を出さないでください」
「ほう、この俺にたて突くつもりか」
「そんなの全く関係ありません!あれは私の獲物です」
「まぁまぁお二人さん、落ち着きなせェ」

言い合っていると隣りで栗色の髪の少年が割り込んで来た。これは一大事な争いなので止めないでください。でもって割り込んでやろうとしないでください。言おうと思ったら、射的のおもちゃの鉄砲じゃなくてバズーカーを構えていた。 そしてなんのためらいもなく・・・ストラップに向けてぶっ放した。

「「はあァァァァ!!!!?」」
「あーらよっと。いっちょ上がりでィ」
「私のストラップが!」
「総悟、てめぇ・・・」
「喧嘩の火種になるくらいなら燃やせばいいっていう俺の親切心でさァ」

この世にこんなにマヨネーズグッズを大事にしない奴を初めて見た!屋台はは丸ごと潰れ去り、ストラップの跡形さえない。 目の前にあったものが一瞬で塵となるなんてありえない。私にとってありえないものはありえない事として絶対起こらないと定義してきたつもりだった。 だから起こらないと思おうとする、つまり出会わなかったことにすればいい。始めから何も見なかったことにしよう。そうだ私は何も見てない。 たとえ1万個に1個あるかないかのレア物的ボディラインが目に焼きついていたって・・・って無理だ。その通り、無理だ。もうこの目にしっかり焼きついている。 なかったことに出来るはずがない、諦められるわけがない。キッと栗毛少年を睨み付けた。

「お前、私のストラップに死んで詫びろ」
「ち、ちょっと!あんた真選組相手に何言ってんの!」
「止めないで。殴るよ」
「(・・・マヨネーズストラップごときでマジだわ、この子!)」
「人に何指図してるんで?自分がやれ」
「ざけんな」
「ふざけたこと言ってんのはどっちでィ。たかがストラップ一つで大騒ぎしすぎですぜ」
「この世に二つとないあのボディラインを葬ったのはお前だっつーの!切腹しろ」
「アンタ、俺とやり合おうって言うんですかィ?」
「上と「待て」

割って入って来たのはあたしの弾にぶち当てて来た彼だった。あたしと少年の掴み合いの手を引きがし、友達の傍まで連れて行かれると手を出せと言われた。 素直に手を出すと、ほらよ。と、ポケットを探り取り出したものをあたしの手に置いた。こ、これは!

「・・・黄金のマヨネーズキャップゥゥゥゥ!?」
「邪魔しないで下せェ、土方さん」
「総悟、やめとけ。それやるからあんたも引いてくれ。こっちが悪かったからよ」

マヨネーズバーコード100枚1口で応募できてしかもの限定3名様の激レア品、黄金のマヨネーズキャップ。 これをを持っているとは・・・。感動で震えるあたしを余所に彼は栗毛少年と言い合いしながら去って行く。もしかしたらあの人はマヨネーズの神様・・・なの? 目的の打ち上げ花火も見ないまま、去り行く彼の背中からあたしは目が離せないでいた。



仕掛け花火師の罠



(07/8/26)