私の幼馴染は良くモテる。校区関係なく、とりあえずモテる。あの顔で黒曜中学の生徒会長という肩書きを持っているから当たり前といえば当たり前なのか。 それでも願うことなら、あの男の本性をその辺りにいる夢見る乙女たちに教えて回ってやりたいくらいだ。

「・・・だからなんで毎日ここに来るのよ」
「いけませんか?」
「いけませんか?じゃなくてここは並盛でしょ!骸は黒曜中の生徒!!」
「言ってるでしょう?僕はから離れられない性質なんです」

そう笑顔で平然と答え、どれだけ何を言っても聞いてくれないこの男に対して溜息が漏れて、そして本日も豪勢に靴箱に詰められた不快な贈り物の山にさらに溜息をつく。

「どうかしたんですか?」
「・・・別に。何もないよ」

ゴミだらけの中に埋まった上靴を、やっぱり骸の前で履く気にはなれなくて(なんだかんだ言ったって骸が悪いわけじゃないし)、 仕方なく靴を持って裸足のまま教室へと向かおうとすると、骸に手を掴まれた。

「離して」
「クフフ、それは無理です」
「なんで?」
「変な虫がつきますから」

言っている事が理解できなくて、何のこと?聞こうした時、骸の手が離れて私の体が急にふわりと宙に浮いた。え、と私と骸が驚いていると抱き上げた本人が口を開いた。

、君また裸足なの?足が汚れるよ」
「ひ、雲雀さん!」
「・・・また雲雀恭弥ですか。で、朝早々からなんですか、このトンファーは」
「毎日不法侵入ばかりする君の能無しのその変な頭にはほとほと呆れるよ」
「君よりは随分利口だとは思いますけどね。さてを降ろしてこちらに渡していただけますか?」
「渡せないよ。の嫌がらせの元凶を今日こそ絶ってやろうと思ってるからね」
「クフフ、奇遇ですね。僕もそろそろ虫退治をしたいと思ってましたから」

抱き上げられたまま何やら険悪なムードが漂っている。毎朝のことながらこちらも居心地が悪くてしかたない(でも抱き上げられたのは初めてで驚いたけど)。 そっと、その場に降ろされて雲雀さんを見上げると、うっすら笑みを浮かべて。

「大丈夫。確実に咬み殺しておいてあげるから」
「クフフ、冗談を。千束、今日のお昼は中庭で食べましょう」

とウィンクする骸の笑顔を視界に捉えた瞬間、全力疾走で逃げ出した。後ろから聞こえるのは明らかな騒音と巻き込まれた周囲の悲鳴。 それすらも聞かないフリをしてとりあえず全力疾走。頭を振ってさっきまでのことは全部忘れよう。そうだ、1時間目の授業、なんだったっけ?

「大体、何であの子が被害に合ってるのか分かってるの?」
「もちろんですよ。あの子のことで知らないことはありませんから」
「分かっててああいうことしてるって相当腐った人間だね」
が好きだからに決まっているでしょう?傷つけるのも癒すのも側にいるのも僕だけでいい」
「ふーん・・・何だか面白くないね。やっぱり君は咬み殺す」
「また乗っ取ってあげましょうか?その体」

全力疾走で裸足で廊下を駆けて、ようやく教室にたどり着いた。ああ、神様。多くは望みません。どうか1日でいいから普通の生活が送りたいです。 ここに入学したときに雲雀さんに助けてもらってから、骸と雲雀さんが毎日のように争いに巻き込まれてるので。 どうして仲が悪いのかとかは聞きませんから、どうか平凡な日を。そう呟いていると、自分の上靴より大きい上靴が足元に投げられた。

「みっともねぇから履いとけ」

言い捨てられた言葉なのに、少し赤くなった彼の横顔を見て幸せを感じてしまった私はきっと、単純。

「あ、ありがとう、獄寺君!」



平凡日常追求主義



(07/6/12)