誰が好みのタイプかと聞けばはっきりと恥ずかしげも無く同じ奴の名前を言い切るこいつの口を誰か止めてくれ。



そ の 一 歩 先 へ


「好みのタイプ?だから何回も言うけど忍足だよ?」
「だから〜侑士の何がそんなにいい訳?」

何度も目の前にいるこいつに好みのタイプを聞いてもこの3年間変わりはせず、同じ名前の奴しか出てこなかった。 しかも知らない奴ならいざ知らず、俺が良く知るダブルスのパートナーだともなれば自然に憎悪の一つも沸いてくる。 確かに侑士はいい奴だと思うし、これが相手さえ違えば間違いなくおススメしているに違いない。 ただ自分が好意を抱いている相手ともなれば話は別だ。

「だって女の子に優しいし、面白いし。あたしの理想通りなの」

そう笑顔で返されてしまえば何も言えなくなる。 これだけ俺が同じことを繰り返し聞いてるんだからちょっとは俺の気持ちにも気付いてくれっての。

「じゃあさ」
「ん?」
「俺が侑士みたいな奴になったら、お前は俺に惚れてくれんのか?」

すると目の前に居るそいつがきょとんとした顔で俺を見た。 あー…俺、今何を口走った?つーかさっきのって告白にもとられる言葉だよなぁ …って!何呑気にしてんだ、俺!こんな無意識に告白の言葉口走って「ごめんなさい」じゃ一生立ち直れないって! 一気に血の気が引いてから、すぐに熱が盛り返した。顔が熱い。

「プッ・・・アハハハ!」

こっちはどう弁解しようか必死に考えてんのに笑い出して・・・俺がお前に告った(?)のがそんなにおかしいか!?

「何それ!岳人は岳人じゃん!忍足になんてなったら困るよ!岳人だから私はいいのに」

そうやって腹を抱えて笑う姿に呆れた。 告白みたいだとも微塵の欠片にも気にしていないその姿にも。

「それに岳人だから忍足のことウンと話せてるんだよ?忍足の前じゃこんなこと言えないよ!」
「・・・そりゃそうだよな」
「そ!岳人は私の隣でずっと居てくれればいいの!だって親友でしょ?」

そう満面の笑みで言われれば、返す言葉もなく照れて顔を伏せた。 なんでお前は相変わらず普通に恥ずかしげも無くそんなことが言える訳? 凄く嬉しいのに、その対象が友達としてだから素直に喜べないんだけど。

「岳人、聞いてる?」
「・・・あぁ」

お前さえ振り向いてくれりゃ俺が侑士に抱いてる劣等感なんてクソくらえなのに。



06/3/4
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