女の自分に守れるものがそんなにたくさん存在しないと分かっていたのに、現実はそれ以上に酷かった。女の子だからとかそんなの関係ないって言っても、結局闘いの場に出たってみんなに守られてばっかりで、足手まとい以外の何者でもなかった。皆の一番近くにいて見殺しの連続で、本当に自分の考える理想像なんてものは甘い考えでしかない。自分の盾になって守ってくれた同胞のそばにしゃがんで手を伸ばす。温かさはもうほとんど残ってなかった。 「いつまでそうしてるつもりなんだ、」 私のしゃがんでいる場所のちょうど後ろから、冷たく言い放つ声が私に投げかけられた。蘇る断末魔。彼の眼。抗争の時の彼は酷く冷たい眼をしている。声の主が誰だか分かっていたって、現に振り返ることができない。怖いの、だ。暖かみのある声なんて此処で響くはずが無いことだと理解しているからこその恐怖が体を震わす。 「、ディーノ」 「冷たいだろ、もう」 「・・・そんな言い方しないで」 「屍は何も話さないまま、冷たく朽ちてしまうんだ」 声の主は私の隣に私と同じようにしゃがみながら、冷たい言葉を私に続ける。でも瞳はとても悲しい色を浮かべていた。けれど私にはどうすることも出来ず、弱弱しい嗚咽まみれの掠れた声で言葉を紡いだ。 「私は、ディーノみたいに、平気なフリなんて、出来ないよ・・・」 学生の頃、同じ教室にいたディーノが好きで、突然やって来たリボーン君がディーノを鍛えるとか言い出したおかげで、今こうしてディーノがマフィアのボスになった経緯のすべては理解できるのに。そのリボーン君に、ディーノに内緒でマフィアについてのことやディーノを守ろうと必死でナイフも銃も鍛えてもらって覚えたのに。お前は向いてないからこんなことさっさと止めた方がいいぞ。リボーン君が私を鍛える前に言った言葉がマフィアで抗争に参加するようになった今では良くわかる。精神的に脆すぎるんだ、私は。 「だからもう、平気なフリしないで泣いて」 お前達のボスだから泣けるわけがないだろう。ディーノは薄く笑う。嗚呼この人はどれだけの重みを背負っているのだろう。守れなかった罪に打ちひしがれて自分を壊しそうになっているのを私は知っている。知っているからこそディーノを受け止めてあげたいんだ。 手を伸ばしてディーノをぎゅっと抱きしめた。何もできない私でも彼を抱きしめることくらいは出来る。だから。 「私の前でくらい泣いてみせて。全部受け止めてあげるから」 どうかどうかディーノがしあわせになれるせかいを。 蜃気楼に見る幻 (09/3/23) |