Let's make a study!



「もっと頑張れよ、。この調子だと英語だけ留年させるぞ」

中学生に留年が本当にあるのかどうか知らないけど、仲のいい英語の先生からそんな言葉が出るとは思わなかった。あぁこの点数じゃ本気で留年させられるのか。さっき受け取った答案用紙を眺めたところで答案の点数は10点。 眺め続けたところで10点中の10点という良い結果にになるわけでもなくいつまでたっても100点中の10点。 先生は好きなんだけど英語なんて大嫌いだ!叫びたい気持ちを押し込めて、溜め息をつきながら席へ戻る。その途中の席に存在するくしゃくしゃの癖毛が目に入った。

「切原は私の気持ち分かるよね!?」
「は?」
「あんたは私を裏切らないよね!?」
「何訳の分からない・・・オイ!」

強引に切原の答案用紙を奪い取って見ると今までの切原とは思えない程、私より何倍以上もの赤丸と点数が書かれていた。 驚いて切原をみると、勝ち誇った笑みを浮かべている。

「俺だってやるときはやるっての」
「・・・切原が私を裏切った」
「はぁ!?」
「謀反者だー!」
「謀反者(ってなんだ)?つーかお前の答案・・・、10点!」
「・・・大声で人の点数をクラスに聞こえるように言うなんてワザとか!」
、騒ぐな!さっさと席に戻れ」
「さらに先生に怒られるとかもう完璧恥さらしだし・・・」

先生のお怒りとクラスの笑いを取って、自分の席へと戻りそのまま机に突っ伏した。別に切原が悪いんじゃないって分かっているけど。けど許せない。いつの間に勉強して苦手教科克服しちゃってるのよ。 休憩時間になって、返却された英語のテストを切原の机の上で、切原の分と私の分をもう一度見比べた。何度も見直してみたけど、切原の点数は私の何倍も多くて、いつもの赤点ギリギリで安堵してる切原じゃないみたいだった。

「やっぱり切原の裏切り者!」
「は?勉強しねぇが悪いんだろ」

そういわれてドキッとした。最近英語苦手になってきて勉強を投げ出して、勉強していないのは確かだ。苦手苦手と騒いでいても苦手な分野でこれだけの良い点を取った切原は相当勉強したんだろうな。 その切原のした努力の何%かを自分でしていたらきっと切原ぐらいの点数は取れたはずだ。英語が苦手といっても切原ほどでもないし、ちゃんとしてれば出来ないなりもある程度は出来たはず。責めるべきは勉強していた切原じゃなく怠惰していた自分だ。

「・・・その通りでした。八つ当たりしてごめんなさい」
「いや、まぁ今回俺が点数良かったのは先輩たちのおかげっつーか」
「・・・もういいよ、慰めにもならないから」
「ならお前も教えてもらえばいいんじゃねーか?」
「は?私おもいっきりテニス部に関係ない人なんですけど?」

テニス部と言えば(私のイメージ的に)体の悪い部長さんとか昔の人みたいな副部長さんとか人のありとあらゆることを知り尽くしてる達人に詐欺師に紳士にハーフに赤髪の大喰いにこの切原と言うなんとも女子に人気高い部活(私からみたら変わり者の集まりみたいな感じ)なんだけれど・・・成績優秀者も多いと聞く。 だからと言って容易に教えてもらうことなんて出来るんだろうか?切原を含めてそんな美形軍団に関わることなんて、それこそテニス部マネージャーさん並の度胸の強さだ。ちなみにマネージャーさんは柳さんの彼女らしくて、他の女の子たちに危害を加えられることなく安全な生活を作り上げている。(なんでかは聞く勇気が無い)

「それは俺がなんとかしてやるって!」
「いや、いいよ!そこまでしてもらわなくても・・・」
「でも点数あげねぇと困るんだろ?」
「そりゃ困るけど・・・」
「な、決まり!が部活に顔出してくれりゃ俺もいろいろ頑張れるってもんでさ」

英語の点数と学校での生存率なら確実に生存率を取りたいところだが、そうも言っていられない。先生は若干本気そうだ。来年からこのクラスのメンバーを「先輩」と呼ばなければならないことになるかもしれないのなら、多少の先輩やら同級生やら後輩やらからの苛めとか嫌がらせには耐えられる自信はある・・・はずもない。でも留年にならないのならまだ嫌がらせと苛めぐらいなんとかなるかもしれない。ようなならないような。 とにかくだ。もうここは命をかけてでもお願いするしかなさそうだ。あれだけの点数を切原に取らせることの出来るテニス部メンバーさんに命を預けてみようではないか。切原に土下座よろしくお願いすると、早速先輩方にメールを送ってくれていとも簡単にOKが出た。

そして来週から、いろんな意味で命の掛かった英語補習が開催される。らしいであることを私はまだ知らなかった。

「聞いたぜよ。今度、赤也の好いとう奴が勉強に来るんじゃて?」
「赤也同様英語が苦手らしい。全くたるんどる。が、努力しようという心がけは認めよう」
「仁王くん、来られる方を苛めたりしないようにして下さい」
「そんな悪か男に見えるかのう」
「ふふ、楽しみだね」
「つーかそいつ何持ってきてくれんだろなー?菓子類なら何でもいいんだけど」
「はぁ?学校内で菓子折り持ってきて勉強教わる奴なんかいねぇだろ?」
「楽しみだねぇ、蓮二!私と一緒にマネージャーになんないかな?」
「それは良い考えかもしれない。彼女のデータは出揃ってるしな」


(07/04/02)